副業・フリーランス経験を転職エージェントにどう伝えるか
面談・書類準備職務経歴書のフリーランス期間の欄を前にして、書くべきか隠すべきか決められず、カーソルだけが 点滅している夜がある。 会社員を続けながら副業をしていた、あるいは一時期フリーランスとして働いていた。 そうした経歴で正社員への転職を考えると、「この経験をどこまで、どう伝えればいいのか」 という迷いが出ます。書くのか、書かないのか、書くならどの粒度か。 この記事では、迷いの種類ごとに先に読む場所が分かるように、転職エージェントへの伝え方の考え方を整理しました。 厚生労働省の公開資料で確認できたことと、編集部の整理は、記事の最後の根拠の欄で分けています。
分かれ道マップ
いま迷っているのは、どの場面ですか
近いものを開くと、この記事で先に読む場所が出ます。
いちばん近いのはどれですか
まず整理しておきたいこと
副業やフリーランス経験の扱い方は、その内容や期間、本業との関係によって変わります。 「隠したほうが安全」と決めつける前に、まずは自分の経験がどのような性質のものかを 整理しておくことが出発点になります。
本業と関連する経験か、そうでないか
応募先の仕事に活かせるスキルや実績につながる経験であれば、 むしろ伝えたほうが評価につながる可能性があります。一方で、応募内容と関係の薄い 副業であれば、無理に詳しく触れる必要はなく、簡潔な記載にとどめても差し支えありません。
会社の副業規定に沿っていたか
在職中の副業について、勤務先の許可制・届出制などのルールに沿って行っていたかどうかも 整理しておきたい点です。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、労働者は副業・兼業を希望する場合にも、 まず自分が勤めている企業のルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルールに照らして業務内容や就業時間等が適切なものを選ぶ必要がある、と書いています。 同じガイドラインは、裁判例を踏まえて企業が副業を制限できる場合の例として、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏れる場合、 競業で自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合を挙げています。
ここから先は、会社ごとの規程の中身と、実際にしていた活動の中身を突き合わせないと判断できません。 規程の定めに沿っていなかったかもしれない副業がある場合、その扱いはこの記事では判断できません。 書類に書く前に、規程の条文と、していた活動(時期・内容・取引先との契約形態)を並べて書き出し、 そのうえで転職エージェントの担当者に事実のまま相談し、一般論としてのアドバイスを受けて判断します。 会社との間で争いになりそうな不安があるときは、各都道府県の労働局などにある総合労働相談コーナーが、 予約不要・無料で相談を受けています(厚生労働省の案内ページによる。土・日・祝日・年末年始は閉庁)。
転職後も続けるつもりかどうか
副業やフリーランス活動を転職後も継続したいと考えている場合は、 応募先企業が副業を許可しているかどうかも合わせて確認しておく必要があります。 ガイドラインは、副業・兼業を許容しているか、条件付きで許容する場合はその条件を、企業が自社のホームページ等で公表することが望ましいとしています。 あくまで「望ましい」という位置づけで、どの企業が公表しているかは確認できていません。 応募先のホームページや求人票に書かれていなければ、聞いてよいのかと迷うところですが、 継続を前提にしているのであれば、内定が出てから慌てて聞くより、応募の早い段階で担当者に 「転職後も続けたい副業がある」と伝え、応募先の扱いを確かめてもらうほうが、入社後の認識のずれを防ぎやすくなります。 ただし、副業を続けたいと伝えたことで選考にどう影響するかは、確認できていません。
もう一つ、副業の形によって、労働時間の扱いが変わる点も押さえておきます。 ガイドラインによると、労働基準法38条は事業場が異なる場合でも労働時間を通算すると定めていて、 事業主が異なる場合も含まれます。一方、労働基準法が適用されない場合(ガイドラインはフリーランス、独立、起業などを例に挙げています)は、 その時間は通算されません。ただしその場合も、過労で業務に支障を来さないよう、就業時間が長くならない配慮が望ましいとされています。 アルバイトのように雇われる副業か、フリーランスとして請け負う副業かで、応募先から聞かれる点が変わる可能性がありますが、 実際にどう聞かれるかは確認できていません。
経歴詐称にならない伝え方の考え方
「経歴を良く見せたい」という気持ちから、実態より大きく実績を書いてしまうと、 経歴詐称と受け取られるおそれがあります。特に注意したいのは、 実際には行っていない業務内容を書く、関与の度合いを実際より大きく見せる、 在籍期間や活動期間を実際と異なる形で記載する、といった点です。 例えば「複数社の業務を統括していた」というような表現は、実際の役割が 一部の作業を請け負う立場だった場合には実態とずれてしまいます。 役割や関与の範囲は、面接で深掘りされても答えられる粒度で書くことが基本です。
フリーランスとしての活動期間がある場合は、履歴書の職歴欄に活動の開始・終了時期を 正しく記載し、その間の業務内容は職務経歴書側で具体的に説明するという役割分担を 意識すると、実態と食い違いのない伝え方がしやすくなります。 活動期間が短い、あるいは案件数が少なかった時期がある場合も、 その期間を無理に隠したり空白にしたりせず、当時の状況を簡潔に書いておくほうが、 後から質問された際に一貫性のある説明をしやすくなります。
職務経歴書での書き方の考え方
受託先の業種や業務内容を具体的に書く
フリーランス期間の職務経歴書では、「フリーランスとして活動」とだけ書くのではなく、 どのような業種・規模の相手に、どのような業務を、どのくらいの期間担当したのかを できるだけ具体的に書くことで、実態が伝わりやすくなります。守秘義務がある場合は、 社名までは出さずに「〇〇業界の企業」といった形でぼかして書く方法もあります。
会社員時代の経験とのつながりを示す
会社員としてのキャリアの延長線上でフリーランス活動を行っていた場合は、 その連続性が伝わるように書くと、ブランクや方向転換のように受け取られにくくなります。 「会社員時代に培ったスキルを、フリーランスとしてどのように発展させたか」という 流れで整理すると、担当者にも意図が伝わりやすくなります。
成果は事実の範囲で具体的に
継続案件の有無や担当した業務の幅など、客観的に説明できる事実は具体的に書いて 差し支えありません。一方で、収入額や成約件数といった、裏付けを示しにくい実績を 誇張して書くことは避けましょう。
面接で聞かれたときの伝え方
始めた理由と学んだことをセットで話す
面接では「なぜ副業・フリーランスを始めたのか」「そこから何を得たのか」を あわせて聞かれる場面があります。収入面の理由だけを答えるのではなく、 本業では経験できなかった役割や、複数の相手とやり取りする中で身についた 調整力・自走力など、応募先の仕事にもつながる学びを添えて話すと、 経験の意味が伝わりやすくなります。
本業への影響を聞かれたときの答え方
面接官が気にするポイントの一つに、副業が本業のパフォーマンスに 影響していなかったかという点があります。稼働時間の配分をどう工夫していたか、 本業に支障が出ないようどのような線引きをしていたかを具体的に説明できると、 自己管理を意識していたことが伝わりやすくなります。
説明のもとになるのは、日々の記録です。ガイドラインは、労働者が自分で各事業場の業務量や進み具合、 費やす時間や健康状態を管理する必要があるとし、始業・終業時刻や休憩、勤務時間などを記録していく方法を例に挙げています。 いまからでも、直近の数週間について、本業と副業それぞれの稼働時間を、カレンダーや手帳から拾って書き出してみてください。 「週に何時間、どの曜日の何時から何時まで」と言えるだけで、「本業に支障は出なかった」という説明が裏付けのあるものになります。 記録が残っていない過去の期間は、思い出せる範囲を「おおよそ」と断って話すほうが、実態からずれません。
確定申告など税務まわりを聞かれた場合
副業・フリーランス収入の確定申告の要否や具体的な処理方法は、収入額や働き方によって 個別に判断が分かれる領域です。面接や書類でこの点に触れる必要が生じた場合も、 税務上の細かい判断についてはこの記事のような一般的な整理だけで断定せず、 税理士など専門家に確認したうえで対応することをおすすめします。
参考として、厚生労働省のガイドラインには、副業・兼業を行って20万円を超える副収入がある場合は、 企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である、という一文があります。 ただし、この20万円が収入と所得のどちらを指すのか、給与以外の収入の種類によって扱いが変わるのかは、 この記事では確認できていません(税の一次資料は国税庁ですが、今回は照合していません)。 面接で聞かれたときは、「申告が必要な収入かどうかは、税務署か税理士に確かめて対応しています」と、確かめた事実だけを話せば十分です。 確かめていないなら、面接の前に確かめておきます。
転職エージェントの担当者にどう相談するか
副業・フリーランス経験の扱いに迷う場合は、書類を作り込む前に、 転職エージェントの担当者へ率直に相談してみるのも一つの方法です。 「この経験は書いたほうがよいか」「どの程度の粒度で書くのが自然か」といった相談に、 一般的な視点で応じてもらえることがあります。担当者によって、経験の差や得意な業界は異なります。 応募先がどのような経験を重視するかは、担当者の見立てであり、結果を保証するものではないので、 根拠を聞いて、自分の事実と照らして判断します。相談の前に、次の3点を手元に用意しておくと話が早く進みます。
- 活動の期間(開始と終了の年月)と、雇われていたのか請け負っていたのかの別
- 現職の副業に関する規程の該当箇所と、届出や許可をしていたかどうか
- 本業と副業それぞれの、おおよその週あたり稼働時間
よくある誤解
副業やフリーランス経験について、「会社員一本の経歴でないと評価されにくいのでは」 と不安になることがあります。副業・兼業の経験が採用で有利になるか不利になるかを調べた公的な資料は、 この記事では確認できていません。評価のされ方は企業や職種、書かれている中身によって違うと考えられるため、 「経験の有無」だけで有利・不利が決まると捉えず、応募先の仕事との関係と、実態に沿った説明ができているかを見直すほうが、 書類作成の役に立ちます。
まとめ
副業・フリーランス経験は、内容次第で、応募先の仕事との関係を示す材料になります。 大切なのは、実態と異なる伝え方をしないことと、応募先にとって意味のある形で 具体的に説明することです。一人で判断が難しいときは、転職エージェントの担当者に 早めに相談し、書類の方向性を一緒に整理してもらう方法があります。 書類を書き始める前の作業として、現職の副業に関する規程を探して該当箇所を読み、 していた活動の期間・内容・契約の形を、メモに書き出しておきます。そのメモの事実が、書類と面接の両方のもとになります。
本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツであり、 特定の転職結果や書類の通過を保証・確約するものではありません。副業に関する規定や 経歴の記載方法は、勤務先の規則や個人の状況によって異なるため、 判断に迷う場合は転職エージェントの担当者など専門家にご確認ください。