求人票の賃金欄と最低賃金。改定が順次発効中のいま、時給・月給を時間額に直して確かめる手順
条件・お金ブックマークしておいた求人を、ひと月ぶりに開いた。時給の数字は、前に見たときと同じまま。ニュースでは最低賃金が上がったと聞いたのに、この数字は新しいのか、古いままなのか。自分の県はもう変わったのか、まだなのか。画面の隅の「掲載日」を目でさがしている。 この記事は、そんな場面で、求人票の賃金欄を最低賃金と見比べるときに確かめられることを、厚生労働省の公開資料で確認できた範囲に絞って整理したものです。個々の求人が最低賃金を満たしているかどうかは、この記事では判断しません。
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状況を開くと、この記事で先に読む場所が出ます。
求人票の賃金欄を見て、引っかかっているのは、どれに近いですか
確認1 自分の県の額と発効日
厚生労働省の「最低賃金制度の概要」のページによると、最低賃金には地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があり、地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない、と書かれています。この記事の表と計算は地域別のみで、特定最低賃金(産業別)の額は扱っていません。同省の「最低賃金の適用される労働者の範囲」のページは、地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用され、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称を問わない、としています。派遣労働者には、派遣先の事業場の所在地を含む地域の額が適用されます(最低賃金法第13条)。この書き方から編集部が読むと、比べる相手は、会社の本社がある県ではなく、働く場所がある県の額です。
令和8年度については、同省の報道発表(令和8年9月3日)が、47都道府県の改定額が答申されたこと、都道府県労働局での異議申出の手続を経て、令和8年10月1日から12月2日までのあいだに順次発効する予定であることを書いています。県ごとの金額と発効日は、同省の「地域別最低賃金の全国一覧」にあります。次の表は、その一部を抜き出した例です。自分の県の行は、この記事では写していませんので、一覧で確かめてください。
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| 都府県 | 改定前 | 答申された改定額 | 発効日(予定) | 確認日時点(編集部) |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 1,226円 | 1,280円 | 令和8年10月1日 | 発効日を過ぎている |
| 大阪 | 1,177円 | 1,231円 | 令和8年10月1日 | 発効日を過ぎている |
| 青森 | 1,029円 | 1,090円 | 令和8年10月29日 | 発効日の前 |
| 京都 | 1,122円 | 1,180円 | 令和8年11月16日 | 発効日の前 |
| 沖縄 | 1,023円 | 1,086円 | 令和8年12月2日 | 発効日の前 |
同省の資料には、発効日は答申公示後の異議の申出の状況などで変更になる可能性がある、という注記があります。発効日が来るまでは、その県では改定前の額が最低賃金です。同じ時期に求人を見比べていても、県によって「新しい額」を基準にしてよい日が違う、ということになります。
確認2 求人票の賃金欄は、何の数字か
ハローワークの「求人票の見方」(厚生労働省のリーフレット)によると、賃金欄は税引き前の金額です。フルタイムの求人は月額(換算額)、パートタイムの求人は時間額で表示され、日給制や月給制の場合も、平均的な勤務時間で時間額に換算して表示される、とあります。同じ資料は、「月給制=フルタイム、時給制=パートタイムではない」とも書いています。賃金形態等、通勤手当、固定残業代、試用期間、昇給・賞与の欄も別にあり、昇給・賞与の実際の支給額は変わることがある、と注意されています。
民間の求人サイトや募集ページで賃金の欄がどう並ぶかは、確認していません。リーフレット「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」(2024年4月施行の職業安定法施行規則)の記載例には、賃金として「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」が挙がっています。固定残業代を採用する場合は、基本給の額(手当を除く額)、固定残業代の時間数と金額、その時間を超えた分の割増賃金を追加で支給する旨を書く、とあります。比べるときは、書かれている金額のうち、どれが基本給で、どれが手当で、どれが固定残業代なのかに分けて読みます。
確認3 最低賃金の対象になる賃金・ならない賃金
同省の「最低賃金の対象となる賃金」のページは、対象は毎月支払われる基本的な賃金で、実際に支払われる賃金から次の六つを除いたものだ、と書いています。最低賃金法施行規則第1条にも、(1)〜(5)にあたる賃金が、算入しない賃金として定められています。右の欄は、求人票のどの欄に当たりそうかを、編集部が並べたものです。
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| 除かれる賃金 | 資料の例 | 求人票で見る欄(編集部の整理) |
|---|---|---|
| (1)臨時に支払われる賃金 | 結婚手当など | 特記事項に書かれた一時的な手当 |
| (2)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 賞与など | 賞与の欄(月給の中には入れない) |
| (3)所定労働時間を超える労働に対する賃金 | 時間外割増賃金など | 時間外労働の欄 |
| (4)所定労働日以外の労働に対する賃金 | 休日割増賃金など | 休日出勤の手当 |
| (5)午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分 | 深夜割増賃金など | 深夜手当 |
| (6)精皆勤手当、通勤手当、家族手当 | (6)は同省のページに掲載 | 通勤手当の欄、皆勤手当、家族手当 |
同省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」のページの計算例では、職務手当は除外されない手当として扱われています。「手当」と名のつくものがすべて計算から外れるわけではありません。迷う手当は、労働局などに確かめる場面です(確認6)。
求人票の月給に固定残業代が含まれているときは、その部分が(3)にあたるのかが気になるところです。上の表では、固定残業代の欄がどこに入るかは決めていません。同省の資料は固定残業代を名指しして扱っていないため、この記事では、あたるかどうかを判断できません(未確認)。計算の出発点としては、確認2で触れた明示事項の「基本給の額(手当を除く額)」から始めるのが、書かれた金額に沿った見方です(編集部の整理)。固定残業代そのものの読み方は、残業がつらくて転職を考え始めたとき、先に確認できることに載せています。
確認4 時間額に直して比べる
同省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」のページは、賃金を時間当たりの金額に直して、最低賃金(時間額)と比べる、としています。式は次のとおりです。
- 時間給: 時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 日給: 日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
- 月給: 月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)。同ページの例では、(月額×12か月)÷(年間所定労働日数×1日の所定労働時間)で出しています
ここで比べる月給や日給は、確認3で除いたあとの金額です。次は、2026年10月27日に作った架空の求人での計算例です。東京都で働くと仮定し、最低賃金は表の答申された改定額1,280円、年間の所定労働日数は250日、1日の所定労働時間は8時間とします。年間休日が115日と求人票にあれば、365日から引いた250日が年間の所定労働日数に近い値になる、というのは編集部の整理です。実際の会社の数字は、求人票や労働条件通知書で確かめます。
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| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 求人票の月給 | 基本給190,000円 + 職務手当15,000円 + 皆勤手当15,000円 | 220,000円 |
| 1. 対象から除く | 220,000円 − 皆勤手当15,000円(確認3の(6)) | 205,000円 |
| 2. 時間額に直す | (205,000円 × 12か月) ÷ (250日 × 8時間) | 1,230円 |
| 3. 最低賃金と比べる | 1,230円 と 1,280円 | この例では下回る |
| (参考)除かずに直した場合 | (220,000円 × 12か月) ÷ (250日 × 8時間) | 1,320円 |
この例は、月給の総額では上回って見えても、対象になる賃金だけで直すと下回りうる、ということを示すための数字です。同じ条件(年250日・1日8時間)で東京都の1,280円に届く月額を逆算すると、対象になる賃金で約21万3,334円以上になります(編集部の計算)。手当の中身、所定労働時間、年間の所定労働日数が違えば、結果は変わります。実際の求人が下回っているかどうかは、この記事では判断しません。
確認5 試用期間中と、発効日をまたぐとき
試用期間中の賃金。求人票に「試用期間中は月給〇円」と、本採用後より低い金額が書かれていることがあります。同省の「最低賃金の適用される労働者の範囲」のページによると、「試の使用期間中の方」は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、最低賃金の減額の特例が認められる労働者のひとつです。最低賃金法第7条も、同じ許可を条件にしています。減額の率は、最低賃金法施行規則第5条で、試の使用期間中の者については「百分の二十」以下の率で、職務の内容や労働能力などを勘案して定める、とされています。第7条の文言から編集部が読むと、許可を受けていない試用期間中の賃金は、減額されない最低賃金が基準になります。求人票から許可の有無は読み取れませんので、条件確認のときに、試用期間中の金額が最低賃金を下回る設計になっていないかを聞くことができます。通知書で確かめる順番は内定後の条件確認・入社日調整で気をつけたいことに、入社後に書面と実際が違うと感じたときは入社して数か月で「思っていたのと違う」と感じたときにあります。許可の基準や期間は、この記事では確認していません。
発効日をまたぐ掲載。最低賃金法第14条は、地域別最低賃金の改正を、公示の日から30日を経過した日(決定で別に定める日があるときはその日)から効力を生ずる、としています。「最低賃金制度とは」のページは、最低賃金額より低い賃金を労使の合意で定めても、その部分は無効で、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる、と書いています(最低賃金法第4条第2項)。リーフレット「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」は、求人企業等が募集情報を提供するときは、掲載した時点を明示するなどして、正確かつ最新の内容に保つ義務がある、とも書いています。
リーフレットは発効日には触れていません。ここからは、以上を並べた編集部の整理です。掲載日・更新日が発効日より前の求人は、金額が改定前のままの可能性があります。ただし、そうでない可能性もあり、どちらかは求人票からは分かりません。気になる求人があれば、面接前の問い合わせや面接で、「現在の賃金額は、この県の最低賃金の改定後の額で定めていますか」のように確かめることができます(聞き方は編集部の整理です)。契約社員やパートで契約の更新が続く場合の、更新上限や無期転換の見方は契約社員で更新が続くとき、無期転換と転職のどちらを先に確かめる?にあります。
確認6 相談できる窓口
厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」によると、総合労働相談コーナーは、賃金の引下げなど、あらゆる分野の労働問題を対象にしています。予約不要・無料で、専門の相談員が面談か電話で対応します。ただし同省のページの労働局ごとの案内には、専門の相談員が不在の日時もあり、予約制ではないが念のため事前に連絡することが勧められている、との注記が付いているものがあります。土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)は閉庁しています。法律違反の疑いがあるときは、行政指導の権限を持つ担当部署に取り次ぐ、とも書かれています。所在地と電話番号は、同省のページで都道府県ごとに確かめられます。
最低賃金法第34条には、労働者は、事業場にこの法律などに違反する事実があるときは、都道府県労働局長、労働基準監督署長または労働基準監督官に申告して、是正のために適当な措置をとるよう求めることができる、とあります。使用者は、申告をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない、とも書かれています。実際に申告するかどうか、自分の賃金が最低賃金を下回っているかどうかは、窓口で、賃金の明細や労働条件通知書、就業規則(賃金規程)を見せて確かめる場面です。判断は、この記事ではしません。
今週のチェックリスト
ここは編集部の整理で、効果を確かめた手順ではありません。
- ☐ 働く場所のある都道府県の、答申された改定額と発効日(予定)を「地域別最低賃金の全国一覧」で確かめた
- ☐ 気になる求人の掲載日(更新日)と、その県の発効日を並べた
- ☐ 求人票の賃金を、基本給・手当・固定残業代に分けて書き出した
- ☐ 確認3の六つに当たる手当を除いて、時間額に直した
- ☐ 試用期間があるなら、その間の金額が別に書かれているかを確かめた
- ☐ 総合労働相談コーナーの場所を、スマートフォンのメモに書いた
まとめ
令和8年度の地域別最低賃金は、10月1日から12月2日までのあいだに、県ごとに順次発効する予定です。求人票の賃金欄を見るときは、働く県の額と発効日、賃金の内訳、対象になる賃金とならない賃金、時間額への直し方を、公式資料の言葉で確かめられます。試用期間中の金額や、発効日をまたぐ掲載については、確かめる点がそれぞれあります。 スマートフォンに、気になる求人の画面と、最低賃金の一覧のページが、二つのタブで開いてある。求人の画面には掲載日、一覧のページには働く県の発効日。この二つの日付をメモに並べておけば、問い合わせの文面にも、そのまま書き写せる。 気になる求人が一つあるなら、その働く場所の県名は、求人票のどこに書かれているでしょうか。
本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。法律や制度、最低賃金の金額・発効日は変わることがあります。個別の賃金が最低賃金を満たしているか、手当が算入されるか、どの窓口が適切かは、総合労働相談コーナー、労働基準監督署、都道府県労働局の窓口、または社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。 求人選びや転職の結果について、特定の結果を保証するものではありません。 タイプ別・エージェント選び方診断は、広告を含むページです。