求人票の試用期間。期間・給与・条件の書かれ方を、応募前と内定後に確かめる
条件・お金内定の連絡をもらった夜、メールに添付された書類に「試用期間 3か月」と一行だけ書かれていた。応募のときの求人票に、こんな言葉があっただろうか。月給の数字は、求人票のものと同じなのか。三か月が過ぎるまでは別なのか。画面を指でなぞりながら、その一行から先へ読み進められずにいる。 この一行は、応募の前、面接、内定のあとで、書かれる場所も、聞く点も変わることがあります(編集部の整理)。厚生労働省の公開資料に書かれていることと、そこから編集部が読んだことを、分けて並べます。
分かれ道マップ
いま、いちばん近いのはどれですか
近い状況を開くと、先に読む場所が出ます。
試用期間のことで、引っかかっているのは、どれに近いですか
応募前 求人票・募集要項の「試用期間」の行
厚生労働省の資料によると、職業安定法は、労働者の募集を行う者などに、募集や職業紹介にあたっての労働条件の明示を求めていて、明示する事項は省令で定められています。職業安定分科会(第194回、令和5年6月20日)の参考資料は、その明示事項に「業務内容、労働契約の期間、試用期間、就業場所、始業・終業時刻等、賃金、社会保険等の適用」などを挙げ、義務の主体を「公共職業安定所、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者等」としています。
厚生労働省のリーフレット「労働者を募集する企業の皆様へ」(平成29年職業安定法の改正等)の表には、最低限明示する項目として「試用期間」があり、記載例は「試用期間あり(3か月)」です。凡例は、この行に「平成30年1月1日より追加等された事項」の印を付けています。賃金の行の記載例は、2024年4月の改正を伝える求職者向けのリーフレットで「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」です。どちらも資料の例で、実在の求人ではありません。
同じリーフレット(右上に「R2.1改正」の表記があります)は、職業安定法に基づく指針の主な内容のうち、試用期間に関する次の二点を挙げています。
- 有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければならない。
- 試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければならない。
ここから編集部が読んだのは、次の点です(編集部の読み)。求人票に「試用期間あり」とだけ書かれ、賃金の行に試用期間中の額が見当たらないときは、記載例と見比べて、聞く点になります。「試用期間なし」の求人での書き方や、民間の求人サイトでの欄の並びは、確認できていません。
面接で 求人票にない点を聞く
2024年4月の改正を伝える求職者向けのリーフレットは、スペースが足りないなどやむを得ない場合、「詳細は面談時にお伝えします」と付して、労働条件の一部を別のタイミングで明示できる、と書いています。その場合は原則、面接などで最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示することになっており、「明らかとなっていない労働条件などがないか、面接等で求人企業に確認することが大切です」と続きます。
試用期間について面接で聞く点を、編集部の整理として四つ並べます。資料に書かれた項目ではありません。
- 試用期間はあるか。あるなら、期間はいつからいつまでか。
- 試用期間中の賃金、手当、勤務時間、休日は、本採用後と違うか。違うなら、どこがどう違うか(指針が、それぞれの明示を求めている点です)。
- 本採用になるかどうかは、誰が、どの時点で、何を見て判断するのか。
- 試用期間が延びることはあるか。あるなら、その定めはどの書面にあるか。
三つ目と四つ目に当たる公的な基準は、取得した資料では確認できていません。会社の説明が書面にも書かれるかを聞く形になります。エージェントを通して応募しているなら、担当者に伝えてもらう方法もあります(編集部の整理)。担当者を選ぶ段階なら、タイプ別・エージェント選び方診断(広告を含むページです)が入口になります。
内定後 労働条件通知書と就業規則で照合する
労働基準法第15条第1項は、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない、と定めています(厚生労働省の法令データで条文を確認しました)。第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができる、と定めています。個別の場合に当てはまるかは、この記事では判断しません。
募集時の明示との違いが一つあります。2024年4月の改正を解説した厚生労働省のパンフレットの「明示事項【労基則第5条】」と、モデル就業規則(令和7年12月版)第7条の解説の項目に、「試用期間」という項目名は見当たりません。パンフレット巻末のモデル労働条件通知書と、厚生労働省の「労働条件通知書の作成例」(Word)にも、この語は見当たりませんでした。労働政策審議会の部会資料(令和5年4月21日)は、募集時の明示と契約時の明示は「異なる事項もある」と書いています。項目名がないことが、書かなくてよい意味なのかは、資料に書かれておらず、この記事では判断しません。
通知書の様式は自由で、厚生労働省がモデル様式を公開している、とパンフレットにあります。モデル様式に専用欄がないため、試用期間は、契約期間や賃金の欄の近く、備考、別紙、就業規則など、会社が選んだ場所に書かれることがありえます(編集部の読み)。作成例の末尾には、就業規則を確認できる場所や方法を書く欄があります。見当たらなければ、求人票の行と照らして聞く点になります。求人票の内容と契約の内容が異なるときは、どの点が異なるのかの明示が求められる、と2017年の求職者向けのリーフレットにあります(例は基本給の額で、試用期間の例ではありません)。「変更の範囲」の読み方は求人票の勤務地と「転勤なし」の記事に、内定後の確認の全体像は内定後の条件確認・入社日調整で気をつけたいことにあります。
就業規則では、モデル就業規則(令和7年12月版)第6条が条文例を載せています。「試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある」「試用期間は、勤続年数に通算する」などです。厚生労働省が示すひな形で、各社の就業規則が同じとは限りません(編集部の読み)。解説は、試用期間の長さに労働基準法上の定めはないが、あまりに長い期間は好ましくない、と書いています。就業規則の作成と届出を労働基準法第89条が義務づけているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です。
試用期間中の賃金・社会保険・有給休暇
賃金: 最低賃金法第7条は、使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、「試の使用期間中の者」などについて、最低賃金額を減額した額で第4条を適用する、と定めています(法令データで確認)。厚生労働省の「最低賃金の適用される労働者の範囲」のページも、許可を受けることを条件として減額の特例が認められている、と書いています。許可が条件なので、「試用期間だから」というだけでは決まらない、と読めます(編集部の読み)。賃金欄の読み方は求人票の賃金欄と最低賃金の記事にあります。
社会保険: 日本年金機構の事業主向けの資料(平成23年12月付。厚生労働省のサイトに掲載)のQ&Aは、試用期間は健康保険法、厚生年金保険法の「臨時の雇用期間」に該当しないため、たとえ1か月でも被保険者の加入手続きを行わなければならない、と答えています。同じ資料は、試用期間であっても加入の要件を満たしていれば届出が必要、とも書いています。4月1日から試用期間として入社し7月1日から正社員になった場合の資格取得年月日は4月1日、という例も載っています。この資料は2011〜2012年のもので、現在の加入要件(短時間労働者の適用拡大など)は読んでいません。雇用保険は、厚生労働省の資料を取得できていません。
有給休暇: 労働基準法第39条が定める付与の要件は、転職して最初の数か月の有給休暇の記事にあります。試用期間を継続勤務に含めるかを直接書いた資料は、取得できていません。上のモデル就業規則の「試用期間は、勤続年数に通算する」は、ひな形の条文例です。
試用期間中・満了時の解雇について、資料に書かれていること
「厚労省人事労務マガジン 別刊第22号」(2011年2月7日発行)は、事業主向けに「試用期間中の解雇は慎重にお願いします」と題し、最高裁の判例(最大判昭48・12・12)では、試用期間中、あるいは試用期間満了時であるからといって、自由に解雇ができる訳ではないと判断されている、と書いています。
中央労働委員会のあっせん事例([9]試用期間中の解雇、[10]試用期間終了後の本採用拒否。事例は平成25年のもので、資料に発行年月の記載はありません)は、Pointに、通常の試用期間中は解約権留保付の労働契約がすでに成立していると解されていること、解約権の行使は、通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならないこと、を挙げています。参照すべき法令には、労働契約法第16条が載っています。
手続きの面では、労働基準法第20条が、原則として、解雇の30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いを定めています。第21条は、「試の使用期間中の者」には第20条を適用しないとしつつ、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合はこの限りでない、と定めています(法令データで確認)。
上の資料と条文は、予告の手続き(14日、30日)の話と、解雇に理由が要るか(客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性)の話を、別々に書いています。手続きがとられているかと、解雇そのものが有効かは、別の問いとして読めます(編集部の読み)。個別の解雇が有効かは、この記事では判断しません。入社後に辞めるかどうかの仕分けは、入社して数か月で「思っていたのと違う」と感じたときの記事にあります。
相談できる窓口
厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」によると、総合労働相談コーナーは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用などの、あらゆる分野の労働問題を対象にしています。専門の相談員が面談か電話で対応し、予約不要・無料です。土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)は閉庁しています。専門の相談員が不在の日時もあり、予約制ではないが念のため事前の連絡が勧められている、とあります。電話番号と開庁時間は変わることがあるため、同省のページで確かめてください。
募集の段階の明示については、2017年の求職者向けのリーフレットが、ハローワークの求人ならハローワークへ、その他の職業紹介やインターネットの求人広告なら、紹介を受けた機関か広告の掲載機関、または都道府県の労働局へ、と案内しています。労働基準法違反と思われる場合の相談先として、2024年のパンフレットは、都道府県労働局の監督課と労働基準監督署を挙げています。
あなたの会社の対応が資料のとおりかどうかは、この記事からは判断できません。個別の判断は、窓口か、社会保険労務士・弁護士などの専門家に確かめることになります。
三つの場面を一枚で見比べる
表は横にスクロールできます →
| 場面 | 見る書面 | 試用期間で見る点 |
|---|---|---|
| 応募前 | 求人票・募集要項 | 試用期間の有無と期間。賃金の行に、試用期間中の額があるか |
| 面接 | 口頭の説明、追加の資料 | 期間、本採用後との違い、判断する人と時点、延長の有無 |
| 内定後 | 労働条件通知書 | 試用期間がどこに書かれているか。求人票の行と同じか |
| 内定後 | 就業規則(見られる場合) | 期間の長さ、解雇や本採用の定め |
まとめ
試用期間の一行について、厚生労働省の資料に書かれていたのは、次の点でした。職業安定法に基づく募集時の明示事項に「試用期間」があること。試用期間中と本採用後の条件が違うときは、それぞれを明示する、と令和2年1月改正版のリーフレットが指針の内容として挙げていること。モデルの通知書に、「試用期間」の専用欄は見当たらないこと。試用期間中や満了時でも、自由に解雇ができる訳ではない、と厚生労働省の資料が書いていること。そのうえで編集部が整理したのは、求人票の行と通知書の行を並べて照合するのが、書面の側からできる確かめ方だ、ということです。 内定の返事をする前に、求人票の「試用期間」の行と、通知書の同じ行を、二枚並べて読み比べる。食い違うところに印を付けて、聞く文面を一通書き出しておく。そのあいだ、一行の言葉に黙って耐えるだけの夜は、少し減っているかもしれません。 試用期間の一行を前に、まず書面で確かめたいのは、期間、賃金、本採用の判断のうち、どれでしょうか。
本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。法律や制度、行政の運用は改正されることがあります。個別の求人や労働契約の内容が適切か、試用期間中の賃金・社会保険・解雇の取扱いが適切か、どの窓口が適切かは、都道府県労働局・総合労働相談コーナーの窓口、または社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。 応募や面接、内定の結果について、特定の結果を保証するものではありません。 タイプ別・エージェント選び方診断は、広告を含むページです。